Mosalogy

会社辞めてハーバードの大学院に来ちゃった感じ

光合成する酵母 (Science. November 16, 2018)

mosaです。

ゆるキャラグランプリ2018では、900を超えるゆるキャラのエントリーの中から埼玉県志木市のカパルが堂々一位を獲得しました。元志木市民として嬉しい限りです。

 

さて、今日は志木市ではなくシキミ酸の話。

シキミ酸というのは、もともとシキミという日本の植物から発見された化合物だそうで、今では中国のトウシキミ由来の香辛料である八角から作ることができるそうです。

 

どうやらエスプレッソマシンで作れるみたいです。笑

www.chem-station.com

 

 

このシキミ酸、植物内ではフェニルアラニンやトリプトファンといったアミノ酸のみならず、色素となるフラボノイド類や香料を作るために大事っぽいし、何よりもインフルエンザ薬のタミフルの原料となっています。

 

一般的に微生物を用いた化合物合成が産業界では大きな柱となっていて、八角からも作れるとはいえ、シキミ酸の合成もビール酵母での代謝反応を利用して得ています。

 

シキミ酸は酵母の糖代謝の中で3-デヒドロシキミ酸 (3-dehydroshikimic acid: DHS) から合成されますが、この反応にはNADPHという還元型補酵素が必要。

 

で、このNADPHを作るのも酵母の糖代謝。

つまり、グルコースの代謝は途中で枝分かれして、シキミ酸合成の方に行くほうもあれば、その反応に必要なNADPHを作るのに大事なペントースリン酸経路 (Pentose phosphate pathway: PPP) に行く方もある。

 

 

 

ここでハーバードのNeel Joshi (男子) らは、このPPPを遺伝的に潰してしまえば、グルコースの代謝を全部シキミ酸合成に持っていけるんじゃないか、と考えるわけです。

 

そうすると、もう一方のNADPHが作れなくなるから結局だめやん、となりそうですが、そこを外から補うシステムを構築したんですね。

 

science.sciencemag.org

リン化インジウム (インジウム燐) という半導体をポリフェノールでできたナノ粒子にいれて酵母の細胞膜にペタペタくっつける。光を当てるとこの半導体から電子が出てきて、くっついている酵母に電子をあげることで、NADP+からNADPHを作っちゃうよと。

 

こういう生物と無機物の合体をバイオハイブリッドとかいうらしく、結構いろんなところへの応用が期待されているみたいですね。

以前にも硫化カドミウムと酵母を組み合わせたバイオハイブリッドはあったらしいですが、リン化インジウムの方が毒性が少ないそうで。

 

 

んで、結果は大成功。PPPに関わる遺伝子ZWF1を欠損させた酵母にこのナノ粒子をくっつけて光を当てると、シキミ酸の合成量は通常の酵母の11倍に膨れ上がったと。

 

 

おめでとう。君の研究結果はScienceに掲載だ。

となるわけです。この研究はWyss Instituteにラボを構えるエンジニアリングプログラムSEASに属する研究者たちの功績で、こういうのをみるとやっぱバイオエンジニアリングの世界は大事だしやりがいありそうだなぁと隣の芝生青い問題。

 

このプログラムにいる同期の友達いたなあと。ウェアラブルロボットの研究してるっていってたな。かっけえな。

誰か脚の細胞に働きかけて背が伸びるようなウェアラブル機器を作ってくれ。

 

ソーラーパネルを身にまとう酵母。

いずれ人間もソーラーパネルのようなものを着て「エネルギー満々だぜ」とかいうようになる日がくるんでしょうかね。