Mosalogy

会社辞めてハーバードの大学院に来ちゃった感じ

結核菌の時間差攻撃 (JEM. October 18 2018)

mosaです。

最近はめっきり寒くなって、外が暗くなる時刻も早くなってきました。

早く暗くなると、仕事を早く終わらせたくなりますよね。

「暗くなってきたから帰ろー」と。

 

逆に融通の聞かない職場環境では、同じ時刻まで働いていたとしても、冬は

「もうこんなに暗いのに働かなけりゃならない」

と憂鬱になるわけです。北欧の冬のうつ病率は高いです。

 

 

とまあ、こんな感じで時間の感覚はとても大事です。

 

今日の論文は、そんなお話とは関係あるようでもなく全く関係ない話です。

 

 

jem.rupress.org

 

 

結核菌が感染したマクロファージでは、感染してしばらく経ってから菌から放出されたmRNAが自然免疫応答を誘導するという論文です。

 

とても結果がクリアで読み心地はよかったです。

 

 

 

ウイルス感染のみならず、細菌感染においても抗ウイルスサイトカインとして言われてきたインターフェロンは誘導されます。ウイルス等の外来RNAやDNAを認識する自然免疫機構は、宿主のmRNAと違った構造をしていれば、バクテリアのRNAやDNAであっても同様に応答するわけです。

 

結核菌の感染に対するインターフェロンの応答としては、結核菌から放出されたDNAを認識するcGAS-STING経路が重要なメカニズムとして言われてきたんですが、今回は、

「DNAが出てくるならRNAも出てくるんじゃね」

と思ってまあそうだよねって感じの結果を発表した論文です。

 

正直インパクトとしてはそこまで大きくないような気がしますが、データや実験が綺麗でした。

 

感染させて4時間までは外来RNAを認識するRIG-I/MAVS経路がないマクロファージでもインターフェロンは普通のマクロファージと同じように誘導される。一方、DNAを認識するSTINGがないマクロファージでは全く誘導されない。

 

でも、8時間、12時間、24時間と待ってみると、RNA応答性の自然免疫機構を持たないマクロファージでは、普通のマクロファージと比べてインターフェロンの産生がとっても低い。

 

 

 

これ、僕だったら最初に4時間の刺激だけで実験して「あー、差がないな」で研究テーマ諦めちゃいそう。

結論を出す前に刺激の濃度や時間を色々試してみるってのはすごく大事なことなんだなぁと改めて考えさせられました。面倒なんだよなあ

 

 

 

どうやら、STING経路で出たインターフェロンによってRIG-I/MAVSの下流で活性化される転写因子IRF7が誘導されることが必要だそう。だから、STINGがないマクロファージでは結核菌から放出されたmRNAがあって、RIG-Iが存在してもインターフェロンが誘導されないんだって言ってます。

 

ここら辺についてはちょっとどうなんだろうなぁとは思います。確かにSTING欠損マクロファージにインターフェロンをうすーくいいタイミングで添加しておくと、RNA応答は生じる。だからSTINGによるインターフェロンが大事なんだよってのはわかるんですが、それが完全にIRF7に帰着できるのかはわからない気がします。IRF7を恒常的に発現する細胞とかを作って実験したらわかりやすいかな、とは思います。

 

STINGとMAVSはTBK1の下流でIRF3とIRF7をそれぞれ活性化するからだ、という仮説が提示されていますが、単純に二本鎖RNAを細胞内に導入してもIRF3を介してRIG-I/MAVS経路はインターフェロンを誘導できるので、ここら辺ってどうなってるんだろう。

 

 

この論文では細胞を用いない実験下で結核菌からRNAが放出されるのも検出できていて、またいくつかのmRNAがRIG-Iと結合することも示されています。

だから、単純にこういう結核菌のmRNAを単離して細胞内にトランスフェクションしてインターフェロンの応答を見てみたらわかりやすいんじゃないのかな、と感じました。各遺伝子のノックアウトを比べて。

 

 

バクテリアのRNAがインターフェロンを誘導するのはすでにリステリア菌とかで示されていましたが、今回のこの時間差攻撃、というのがセールスポイントなんだと思います。最後の動物実験で、MAVS欠損マウスでうすーい濃度の結核菌に感染させた時の生存率が見事に100%を維持しているので、このインターフェロン応答が病態生理に一役買っていることも頷けます。

 

この最後の動物実験で、様々な遺伝子型のマウスでの比較ができたら面白かったな、と思いました。

 

 

てな感じ。小学生の読書感想文みたい笑