Mosalogy

会社辞めてハーバードの大学院に来ちゃった感じ

そんなに眠いですか? 自己免疫疾患かもしれませんよ (Nature, September 19 2018)

mosaです。

いきなり毎度のお約束ですが、内容が間違っていても責任とりません

 

 

よし、予防線はしっかりと張ったぞ。

では行こう。

 

朝が早いせいか、夕方になるとどうしても2時間くらい寝てしまいます。

 

昔から異常に睡魔がくるときがあって、集団でご飯食べてる時に気絶レベルで眠くなる時とかは本気でナルコレプシーなんじゃないかって疑ってしまいます。

 

ナルコレプシー (narcolepsy) は端的に言うと「昼間なのにすごい眠い」という、慢性的な睡眠異常の稀少疾患です。情動脱力発作 (cataplexy)*1を伴う1型とそうでない2型があるようで、合わせて患者は2000人に1人だそうです (意外と多いな、と思いました) 。

 

このナルコレプシー、どうやらヒポクレチン (hypocretin: HCRT)*2という睡眠を制御する神経物質を分泌する視床下部の神経細胞がなんらかの原因で減ってしまうことで起こるそうです。

(逆にこのヒポクレチンの作用に拮抗する化合物は、不眠症の薬として用いられているようです。)

 

どうしてこのHCRTを作る神経細胞が減っているのかはわかっていませんでしたが、主に最近の研究結果*3から、「免疫細胞から攻撃を受けて死んでしまっているのではないか」との見方が有力でした。

 

 

そして今週、UniversitàDella Svizzera Italiana (USI) という大学をはじめ、様々なスイスにある期間が共同で、この説を裏付ける研究結果をNatureに発表しました。

www.nature.com

 

(同紙による解説記事はこちら。)

 

ナルコレプシーの患者においてHCRT産生神経細胞を特異的に認識する自己反応性T細胞が検出されたという内容です。

 

  • HCRTを提示した単球にex vivoで反応する血中メモリーT細胞の割合及びその反応性は、ナルコレプシー患者の方が健常者に比べて高い。HCRTのみならず、HCRT産生細胞に見られるTRIB2タンパク質に対する反応性も患者群で高い。(ところが、実はTRIB2特異的メモリーT細胞の割合は、健常者でも患者でも変わらない)
  • ちなみにインフルエンザワクチンとの関連が示唆されているが、これらの (インフルエンザワクチンと関係ない) ナルコレプシー患者のメモリーT細胞がインフルエンザウイルスと反応しなかった。
  • メモリーT細胞のT細胞レセプター (TCR Vβ) の抗原認識配列は単一ではなく、HCRT及びTRIB2の様々な部分を認識可能であり、これは同一患者内または患者間でも共通の配列である。
  • 末梢血での解析ではHCRT反応性のメモリーT細胞の大多数はCD4陽性で、CD8陽性細胞は稀であったが、いざ脳脊髄液 (cerebrospinal fluid: CSF) でTCRの配列を見てみると、上記解析で得られた配列と共通なCD4陽性T細胞は確認できず、CD8陽性T細胞が少し見られただけだった。

 

といったところでしょうか。

 

CSFで確認されない末梢血中のHCRT反応性メモリーCD4陽性T細胞が何を意味するのか、が謎めいているような気がします。今回の7人の解析から確認されなかっただけで、脳内にこのような細胞が絶対存在しないと断定はできませんが。サンプル数が少ないのは稀少疾患なので致し方ないというのもありますし、何しろ脊髄液なんか取られたくありません。笑

 

こういった疑問と合わせて、この自己反応性T細胞が果たしてナルコレプシーの原因なのか結果なのか、というのはまだわからないと思います。特に脳内で確認されたCD8陽性細胞がHCRT産生神経細胞を直接攻撃しているという見方はある程度自然なものかもしれませんが、ではどうしてこれらCD8陽性細胞が自己反応性になるのでしょうか、クラスIのMHCについてはあまり調べられていないかと思います。(ちゃんと読んでないけど)

 

 

この論文はUlf Kallweit, Claudio L. Bassetti, Federica Sallustoと筆頭著者のDaniela Latorreと4人の研究者がequally contributing authorsとされています。

この論文のLast authorであるFederica Sallustoの研究室は決して睡眠学の研究室ではなく、T細胞を主とした免疫学の研究室です。Wikipediaにも載っている免疫学者で、幅広い範囲において有力誌にたくさんT細胞絡みの論文を掲載しています。

(こういうデータサイエンス寄りの研究はとりあえず何かやればいい雑誌に載るから羨ましいなぁ。。。。白目)

 

今回の論文は、同じくスイスに拠点をおく神経科学のナルコレプシー専門医たちとタッグを組んで領域横断的な研究をしました、みたいなところの話題性もNatureに受理された理由の一つかもしれませんね。

 

 

あー、よく寝た。

*1:情動脱力発作とは、感情の高ぶりによって発する発作症状のこと

*2:ヒポクレチンはオレキシン (orexin) とも呼ばれます

*3:ナルコレプシーの患者ではHLAという免疫関連分子の遺伝子に変異が認められる、インフルエンザワクチンの摂取とナルコレプシー罹患に相関がある、などの研究結果が既に報告されています