Mosalogy

会社辞めてハーバードの大学院に来ちゃった感じ

ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング 田中宏暁

mosaと申します。

 

僕は活字アレルギーです。本も論文も読むのが好きでなく、子供の頃も漫画を読むのすら面倒で仕方がありませんでした。デスノートとかも、僕にとっては文字多いんですよ。

 

読むのが嫌いとか、もはや最高学府に身をおいていていいのか甚だ疑問ですね。

 

 

本屋に行ったりamazonで本の表紙を閲覧するのは好きなんです。

自分の知らない世界がこんなにも広がっていて、頑張ればこんなにも知識をこれから身につける伸びしろがあるのかぁなんて思うとワクワクします。

 

ーー読まないんですけどね

 

そんな僕も科学関連の本は好きで、中でも講談社のブルーバックスなら読める、という謎の体質の持ち主です。

 

先日、アメリカにいながら日本の本を電子書籍で読むために重宝しているebookjapanにて、ブルーバックスの割引キャンペーンが実施されていました。

期間の最終日にある程度買いためてしまったので、すこーしずつ読んでいます。

 

論文同様、読んだ本について軽くでも何かを書き残すことは、自分の中に定着させるという点でいいかと思いまして。

 

今日は一冊目。運動生理学に関する本です。

ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング - ブルーバックスシリーズの特設ページ

 

(この記事を書くときに知りましたが、著者である田中先生は今年の4月末に膵臓がんで亡くなってしまったそうです。)

 

スロージョギング研究の第一人者である著者 (スロージョギングの名付け親) は、ご自身の研究及び仮説をもとに、50歳にしてフルマラソンを2時間38分48秒で走り抜くことに成功したようです。そのために、毎日のスロージョギングで10kgの減量を果たしているようです。

この本は、そんな著者がご自身の体験や研究結果を踏まえながら、スロージョギングについて説明している書籍です。

 

本のタイトルからでは少し想像しにくい点もありますが、端的には「長距離マラソンをスローペースで走るといいことだらけ」という内容です。

 

あくまで自分用にブログを書いているので、本の主張の中で、自分が後で見返したときに参考にしたいポイントを各章ごとに列挙します。なんか間違ってても責任とりません。

 

第0章 この本の効果的な使い方 ランナーの悩み、始める前の疑問を解消する

 

この章は導入部分で、以降の章で詳しく解説されているので割愛。

 

第1章 走るための基礎知識<理論編> ウォーキングよりランニングがいい理由

 

ヒトは狩猟採集生活の中で長距離を走るために二足歩行へと進化した (Branble and Lieberman, Nature 2004)。実際、ウォーキングのスピードを上げていくとヒトは時速6kmあたりから走り始める。これは、速度の高いウォーキングには体が地面から浮かない分、前方へ推進するエネルギーがランニングよりも必要になるからだ。しかし実際の消費カロリーを見てみると、時速8kmまではランニングの方が消費カロリーが高い。時速6~8kmではランニングの方が消費カロリーが高いのに、ウォーキングの方が体に負荷がかかる分きついと感じるため、走り出すそうだ。

 

逆に言い方をすると、ヒトが無理なく走り出すこのスピードは、きつくもないしウォーキングよりもカロリーを消費できるということ。しかも最終的に同じ距離を走るというのであれば、ランニングでは速度によらず総消費カロリーは同じだそうで、要はゆっくり走れば楽していっぱいカロリー使えるじゃん、というお話。

 

また筋肉の観点からいうと、ウォーキングとランニングでは使用する筋肉が異なり、同ペースで比較してもスロージョギングの方が腹筋や足の筋肉を使用する。そのため、加齢に伴う足の筋肉の現象を防ぐ効果もスロージョギングにはあるのだろう。(参考文献まではたどっていないが、ここのデータは正直にいうと信憑性に欠ける。ただ、主観的におそらく真であろう。)

 

従って、ランニングの観点からいうと、ランニングのために筋肉トレーニングをする必要はない。走っていれば自然と必要な筋肉はついてくるし、その他のトレーニングにようる筋肉量増大は逆に体重増加により走る際の負担が増えるからである。

(※ただし、あくまでランニングに主眼をおいた際のはなし。)

 

第2章 走るための基礎知識<実践編> スロージョギングが、マラソン完走・サブスリーへのいちばんの近道

 

サブスリーとは、マラソンの完走タイム3時間を切ること。達成のためには、スロージョギングのトレーニングを地道に続けることが一番の近道である。ポイントは、

  1. 「にこにこペース」(笑顔で喋れるレベルのペース、キツイかもと感じる手前) でゆっくりと走る
  2. 歩幅を狭くして、フォアフット (足の指の付け根あたり) で着地する

という点。「にこにこペース」では乳酸がたまらないので疲れない。そしてその上限のペースは継続とともに自然に上昇する。着地に関しては、かかと着地よりもフォアフットの方が歩幅が狭くなるため一歩一歩の衝撃が少なくなる (Lieberman E, et al. Nature 2010) 。歩数の目安は、15秒で45歩以上。

 

※アキレス腱に負担がかかる場合は、フォアフットではなくつま先で着地しているので、間違っている。僕は走り出しの際にここが痛むので、後でしっかりと確認します。上のリンク先にYouTubeの動画もあるので、見てみます。

 

呼吸に関しては特別なケアはいらない。自然に腹式呼吸になる。またこの際に顎が上がるが、無理に顎を引いて走ると腹式呼吸が難しくなるため、顎も多少上げたままにしておくほうがいい。

 

第3章 ランニングとダイエット ランニングで効率よく痩せる、痩せて効率よく走る

 

僕が毎朝ジムに行ってトレッドミルに乗っている理由は、マラソンを走りたいからではなく脂肪を落としたいからです (2018年9月11日現在 体脂肪率6.7%) 。そのため、僕にとってはこの章が大事。

 

ランニングは筋トレと比較すると運動強度こそ低いが、実際の稼働時間と掛け合わせるとエネルギー消費はランニングのほうが高いだろう (ジムに1時間いても実際にウェイトを扱う時間が合計10分、とした場合の計算らしい) 。

 

消費カロリーは以下の計算式で求められる。

「メッツ・時」 × 「体重 (kg) 」= 消費カロリー (kcal)

(メッツは安静時の何倍のエネルギーを消費するかの単位。時間 (h) をかけると「メッツ・時」。すなわち安静時でも1時間に体重分のカロリーは消費する。)

 

内臓脂肪を減らすためには1週間に30メッツ・時の運動が必要。

スロージョギング (時速6km: 4メッツ) では、毎日1時間行うと1週間で

4 (メッツ) x 1 (時間) x 7 (日) = 28 (メッツ・時)

の運動を行えるため、このレベルでようやく内臓脂肪が減る。4メッツのウォーキングは7500歩程度であるため、同じ運動量に達するためには普段の生活の歩数に+7500歩が必要

 

一方、同じ距離で両者を比較すると、よほど早歩きでない限り1kmあたりのカロリー消費がウォーキングでは体重 (kg) × 0.5 (kcal) に対しランニングでもスロージョギングでも体重 (kg) × 1.0 (kcal)と実に二倍になる。

 

ということで毎日一時間ゆっくり走って食欲のままに食べなければ必ず痩せる。

ちなみに著者のダイエット方は一日一食ダイエット。と言っても朝と昼も完全カットではなく300 kcal程度に抑える。夕飯は、ハーバードのジーン・メイヤーの研究を参考にし、「一時間以上運動できたら食欲のままに、そうでなければ腹八分目に控える」そうである。

 

ちなみに脂肪燃焼の「20分ルール」は強度の高い運動限定で、軽い運動を食事前に行う分には走り始めから脂肪が燃焼されるし、そもそも使われるのが糖だろうが脂肪だろうがエネルギーを消費するなら運動時に何が使われるかによらず脂肪は最終的に減るでしょ、というのが著者の主張 (糖で蓄えられるエネルギーには限界があるので) 。

 

第4章 ランニングの生理学 メカニズムを知れば、効果が上がる

 

この章は生理学 (あるいは生化学) について。生物研究をしておきながらこういう代謝系のおなはしは恥ずかしながらいつも忘れてしまうので、いい復習になります。

 

エネルギー消費はATP 1 mol (507 g) あたり7.3 kcal 。しかし、体内に貯蔵できるATPは100 g程度。ADPをATPに再合成するクレアチンリン酸 (CP) の貯蔵量も200 gなので、ミトコンドリア内での酸素を必要とするTCAサイクル (クエン酸回路) によるCPの再合成が大事。

TCAサイクルの原点であるアセチルCoAは脂肪酸あるいはピルビン酸由来であるが、酸素不十分な条件では解糖系産物であるピルビン酸はミトコンドリアによる代謝が追いつかず乳酸に変換される。言い換えると、スロージョギングのように酸素が十分にある状態では脂肪をエネルギー源として利用するため、乳酸蓄積もおこらず疲れない。また、このペースではグリコーゲンの枯渇による燃料不足も抑えられる。

 

ちなみに乳酸蓄積で疲れるのは、乳酸そのものが原因ではなく、乳酸から解離する水素イオンが筋肉に蓄積されることによってアドレナリンやノルアドレナリンが分泌し、心臓の鼓動や呼吸を荒くするからだという主張です。

 

すなわち楽に走れる「にこにこペース」は最大酸素摂取量の影響を受けるが、ミトコンドリアのマスター遺伝子であるPGC-1αがこのペースのスロージョギングで発現する (※僕自身はデータを見てないのでなんともいえません) ので、スロージョギングを続けていればミトコンドリアも増えていき酸素摂取量も増えていき、次第に早く走れるようになる、らしい。

 

にこにこペースの生理学的なメリットとして「ランナーズハイ」も挙げられている。マリファナと同系統の物質である脳内の内因性カンナビノイドはスロージョギングのみで分泌され、また20分程度で充分だそうだ。

 

第5章 マラソンへ向けたトレーニング フルマラソン完走、サブスリーを目指す

 

個人的にマラソンのタイムをどうこうしたいという熱い思いがあまりないので、ここら辺はさらっと記録します。

 

週に20~30 kmのランニングを3ヶ月続けることで、フルマラソンに必要な体力は備わる。目標タイムに応じてこの距離を徐々に上げていけばいい。

 

体重を減らせばタイムは縮まる。基本的に余分な脂肪を落とし体重を減らすことがタイム向上につながるため、とにかくゆっくりでいいから走行距離を稼ごうよ、ということらしい。

 

基本はスロージョギングを継続的に行えばいいが、乳酸閾値をわずかに上回るランニング1 kmの間に超スロージョギングを挟むインターバル・トレーニングを行うといい。

 

普段の食事は「低炭水化物・高脂肪食」により脂肪をエネルギー源として使えるようにする。こういったメニューでは総摂取カロリーも抑えられることも理由の一つ。

ランニングと食事の関連でいうと、トレーニングは早朝の空腹時が良い。理由は、脂肪の分解を抑えるインスリンが低濃度であるため脂肪を分解しやすいから。空腹での運動時にはPDKの発現が増加し、脂肪の消費が促進されるそうだ。

 

筋トレでいうと、膝伸展運動の実験から、毎日コツコツよりも1日置きに2日分のトレーニングをまとめて行った方がミトコンドリア機能は高まるらしい。

 

(※この辺りのデータを見てないのでなんともいえませんが。暇があったら参考文献を見てみようかと思います)

 

第6章 レースのコンディショニング レース直前からレース後の注意点

 

もはやマラソンを予定していない自分には関係のないレベルに達してしまいましたが。

 

レース前でもハードな運動は避けて筋肉を痛めない。水分を取りすぎると低ナトリウム血症になってしまうので全給水所で水を飲むといったことは避ける。

 

通常の低炭水化物食とは打って変わって、レース3日前からは高炭水化物の食事をとり、筋肉中に多くのグリコーゲンを蓄えるようにする (グリコーゲンローディング) 。効率的なグリコーゲンローディング法として、筋肉をグリコーゲン枯渇の疲労困憊に追い込んでから炭水化物を摂取するとグリコーゲンがより多く筋肉に蓄積されることが1966年のNatureに出版されたエアロバイクの実験で示されている。

このためには、レース3日前に長距離を走り筋肉を傷めずにグリコーゲンを枯渇させることが大事。走る30分前に糖分を摂取すると、インスリンにより脂肪ではなくグリコーゲン代謝が促進されるため、枯渇させやすい。前日はロードしたグリコーゲンを減らさないためにも、ランニングを含めとにかく運動は避ける。

 

この理論によると、レース当日に「身体が重い」と感じた方がうまくいくということになる。

 

逆にレース当日は高炭水化物食を控える。なぜなら、グリコーゲンはすでに満タンになっているし、インスリン分泌によりレース中の脂肪燃焼が阻害されてしまうから。

 

レース中はもちろんにこにこペースで序盤のグリコーゲン利用を控える。グリコーゲンが利用されるようになり脳が披露してきたら、糖分を走りながら軽く摂取するといい。

 

第7章 ランニングと健康 継続して走ることが身体にもたらす効果

 

ここまでくると過去の記述と重なる点も多いので、新たに重要と思った点をピックアップします。

 

ランニングは心臓に負担がかかってよくないという指摘が多いが、スピードの速いランニングと比べて、スロージョギングでは血圧が上昇しない (これは実際に著者が走りながら自分の心臓から駆動した中心血圧を測定した結果です) 。

むしろ、ランニングの継続により骨格筋繊維を取り巻く毛細血管が増えるため、毛細血管内側のリポプロテインリパーゼが増え、脂肪の分解により脂肪酸とHDLコレステロールが増加する。HDLの観点から見ると動脈硬化が抑制されることになる。

 

血液量増加のメリットとして、体温調節もあげられる。血液中の水分が汗となり体温の上昇を抑えるので、ランニングはむしろ高温環境に身体を適応させることとなる、という主張。もちろん無理のない範囲で。

 

最大酸素摂取量の増加は先に述べたとおりであるが、これはがんの死亡リスクとも相関がある。(あくまで相関であるというのは僕個人としての見方ですが、最大酸素摂取量は厚生労働省が基準値をもうけるパラメータとしている以上、これを高めるスロージョギングは少なくとも「健康にいい」とは言えるかなと思います。

 

寿命に関しては、50歳以上のランナーとランニングの習慣がない人の20年後の生存率を比較したデータが紹介されている。生存率はランナーが85%で非ランナーが66%と大きな差が開いている。(因果関係はわからないと思います。ランナーと非ランナーではランニング以外にも生活習慣が異なってくるでしょうし。)

 

マウスにランニングをさせると脳由来栄養因子の遺伝子発現と海馬の新生細胞数が増加する、そして脳機能も高いそうだ。アルツハイマー病のモデルマウスにおけるアミロイドβの増殖もランニングで抑えられた様子。ヒトにおいても、スロージョギングをさせたグループは前頭前野の機能テストの点数も高かったらしい。

 

 

 

 

長くなってしまいました。。次回からは絶対に記録の量を減らすと思います。これじゃ続かないですからね。

「おわりに」の部分で、著者はPGC-1αの増加がアイリシンの生成分泌を介して間脳で神経細胞の新生を促すという論文、運動によるIL-15の誘導によりPGC-1αが発現するという論文に触れています。これらの結果から、スロージョギングがPGC-1αの誘導を介してアンチエイジングにつながるという仮説を提唱しています。

 

 

「スロージョギングは楽だしタイム向上にも健康にもいい」という本書での主張は大方納得のしやすいものであったと感じただけに、スロージョギングを極めた著者の田中先生が70歳という若さで膵臓癌でなくなってしまったことが非常に残念です。